openpageのチームである食品OEM企業の営業責任者と話す機会があった。従業員数は500名弱、飲料や加工食品の受託製造を手がけている企業だ。
「Salesforceを検討したんです。でも、うちには合わないなと思って見送りました」
理由を聞くと、明快だった。
「案件数や売上額を管理するツールじゃないんです。うちが知りたいのは、なぜその案件が受注できたのか、なぜ失注したのか。商談の中身が見えないと、改善のしようがない」
この言葉は、受託ビジネス特有の営業構造を端的に表している。
受託ビジネスの営業は、「量」ではなく「質」で決まる
定型商材を扱う営業とは異なり、受託ビジネスの営業には独特の構造がある。
まず、案件の期間が長い。1年前後かかることも珍しくない。顧客の意思決定プロセス、規制対応、複数部署との調整。これらが重なり、商談は長期化する。
次に、1社あたりの案件が複数並行する。新商品の企画、既存商品のリニューアル、別ブランドの立ち上げ。同じ顧客に対して、複数のプロジェクトが同時に走る。
そして、社内の複数部署が関与する。営業だけでは完結しない。企画、品質保証、デザイン、知財。それぞれの専門家が関わり、顧客に対して統合的な提案を行う。
つまり、受託ビジネスの営業は、高度なプロジェクトマネジメント能力を要求される。案件数を増やすことよりも、1件1件の商談をいかに深く、的確に進めるかが重要になる。
SFAが管理するのは「結果」であって「プロセス」ではない
SalesforceをはじめとするSFAツールは、優れたシステムだ。案件数、フェーズ、金額、担当者。営業活動の定量的な側面を可視化する。
しかし、受託ビジネスの営業が本当に知りたいのは、定性的な情報だ。
顧客はどんな課題を抱えているのか。どんな提案をして、どんな反応があったのか。どの段階で案件が止まり、なぜ前に進まないのか。誰がボールを持っていて、次に何をすべきなのか。
SFAに「商談の進捗率60%」と入力しても、その70%が何を意味するのかは誰にも分からない。営業担当の主観が入り混じり、実態は見えない。
ある受託製造企業の営業企画担当者は、こう言った。
「日報には『良い感触でした』と書いてある。でも、何が良かったのか、次に何をすればいいのかが分からない。結局、担当営業に聞かないと何も進まない」
これが、受託ビジネスの営業が抱える構造的な問題だ。
「誰が何を提案しているか」が見えない組織
商談の中身が見えないと、何が起きるか。
まず、営業の属人化が加速する。トップ営業がなぜ成果を出しているのか、組織として分析できない。成功パターンが型化されず、再現性がない。
次に、マネジメントの質がバラつく。マネージャーの経験値や勘に依存し、部署ごとに指導の水準が異なる。組織全体の底上げができない。
そして、案件が突然失注する。「あの案件、どうなった?」と聞いたら、もう競合に決まっていた。途中のプロセスが見えないから、手の打ちようがない。
冒頭の食品OEM企業も、同じ課題を抱えていた。
「コミュニケーションツールで案件ごとにグループを作っているが、数十〜100以上ある。どのグループにどんな情報があるのかぐちゃぐちゃで誰も把握できていない。担当が変わると、過去の経緯を顧客に聞きに行くしかない」
情報が散在し、履歴が残らない。この状態では、組織的な営業力など育つはずがない。
デジタルセールスルームという選択肢
この構造を変えるには、営業プロセス全体を可視化し、顧客と同じ視点で情報を共有する必要がある。
我々がopenpageで実現しようとしているのは、まさにこの思想だ。
デジタルセールスルームは、営業とお客様が案件ごとに専用のサイトを共有し、そこに提案資料、議事録、ネクストアクション、契約書など、案件に紐づくすべての情報を集約する仕組みだ。
重要なのは、顧客と営業が同じ画面を見ているという点だ。顧客がどの資料を見たのか、何回閲覧したのか、どのページで止まっているのか。これらがすべて可視化される。
営業担当は「資料を送りました」で終わらない。顧客が本当に見ているのか、理解しているのか、興味を持っているのかを、データとして把握できる。
そして、この情報は社内の関係部署とも共有される。企画担当者、品質保証、デザイナー。全員が同じ情報にアクセスし、リアルタイムで状況を把握できる。
「誰のボールか」が明確になる。案件が止まっている理由が分かる。次に何をすべきかが、全員に見える。
受託ビジネスでの実績
実際に、あるOEM企業では、こんな成果が出ている。
商談期間は平均1〜3年。試作を数十回以上繰り返すこともある。以前は、この履歴がまったく残らなかった。担当が変わると、「1年前にどんな話をしていたか」を顧客に聞き直すしかなかった。
openpageを導入後、すべての試作プロセス、顧客とのやり取り、合意内容が記録として残るようになった。
「打ち合わせの段取りがシンプルに分かりやすくできた。お客様も頭を整理しやすくなったのではないかと思います」
営業担当からはこんな声が上がった。
そして、この企業の社長・役員は、自らライセンスを追加した。全案件の状況をリアルタイムで把握できるようになったからだ。
経営層が知りたいのは、「受注率は何%か」ではない。なぜA社は受注し、B社は失注したのか。その理由が分かれば、次の打ち手が見える。
「今、何に投資すべきか」という問い
ある受託製造企業の営業企画担当者は、こう言った。
「Salesforceは機能的に魅力的で、検討をしていました。でも、今必要なのか?今、数値が上がるのか?と言われると違うなと思ってまして」
彼らが求めているのは、営業成績の管理ではなく、商談プロセスの改善だ。
リードを大量に獲得する必要はない。エンタープライズ顧客に対して、深く提案する営業モデルだからだ。必要なのは、1件1件の商談を、いかに質高く進めるかだ。
SFAとデジタルセールスルームは、対立するものではない。役割が違うだけだ。
SFAは「どれだけ売れているか」を管理する。デジタルセールスルームは「どう売れているか」を可視化し、改善する。
受託ビジネスにおいて、今投資すべきは後者ではないか。
営業の透明性を高め、顧客との対話を根本から変えたいと考えているなら、こちらを見てほしい。我々が目指している世界観が伝わるはずだ。
あなたの組織では、「誰が何を提案しているか」が見えているだろうか?


