Salesforceについて
Salesforceは「SaaS(Software as a SaaS)」という考え方の生みの親です。
Salesforceを立ち上げたのはマーク・ベニオフという方で、立ち上げたのは彼が30代前半ぐらいの時。
マーク・ベニオフさんはもともとオラクルというBtoBのソフトウェア出身でしたが、オラクルで働きながら、「SaaSという概念を新しく作るんだ」という気概を持って生み出したのがSalesforceです。
当時のオラクル代表のラリー・エリソンという方は、このマーク・ベニオフがお気に入りで、創業時にも出資をしていました。
彼はオラクル在籍時代どんどん出世をしていったので、あまりの出世ぶりに「ラリー・エリソンの親戚なのでは」と言われたぐらい、やり手の優秀なビジネスパーソンだったようです。
そんなマーク・ベニオフの会社がSalesforceなので、そもそも経営のやり方自体大いに学ぶところがあります。
SaaSの生みの親であり、SaaS経営という意味だとまずはSalesforceこそが見習うべき会社だと言えます。
そもそもSaaSとは?
SaaSは「Software as a Service」の略ですが、簡単に言うと「インターネットサービスを使うように、ソフトウェアを使えるようにしよう」という意味です。
SaaSというものがなかった時代には、企業向けのソフトウェアを導入する際には会社のサーバールームに行き、各会社にカスタマイズした形でソフトウェアを作って組み込む、オンプレミス型の製品が主流でした。
マーク・ベニオフは物理的にサーバーを組まずに、インターネット上でBtoBのソフトウェアを使えた方がいいのでは、と考えたわけです。
当初はセキュリティの懸念もあり、
「そんなもの絶対使わない」
「インターネット上に自社のデータをあげるなんてとんでもない」
と各社は反対しました。
最初にSalesforceを使い始めたのは、やはりIT系ベンチャー企業が中心だったようです。
最初は色んな方に反対されて、メディアも最初は怪訝な顔をしていたようですが、そういった懸念や反対意見に対して、1つ1つ丁寧にメディアコミュニケーションを行ったり、顧客へのコミュニケーションを行うことで、少しずつ「SaaS」と言う概念が市民権を広げていったのです。
これはまさにSalesforceが生み出した功績だと言えます。
「サブスクリプション」もSalesforceが生み出した
さらに、「SaaS」という言葉を生み出したのはSalesforceですが、
実は「SaaS」という言葉だけではなく、もう1つ非常に重要なワードも生み出しています。
それこそが、「サブスクリプション」というワードです。
SalesforceはSaaSの生みの親であると同時に、サブスクリプションの生みの親と言ってもいいですね。
元々、「サブスクリプション」という言葉を初めて使ったのがZuoraという会社のティエン・ツォさんという方です。
彼はSalesforceの初期のメンバーであり、Salesforceのマーケティングと経営戦略の責任者をされていらっしゃった方です。
Zuoraが「サブスクリプション」という言葉を生み出し、主にSaaS向けの請求管理システムを作りました。
SaaSは月額課金のビジネスモデルですが、使用量に応じた従量課金は基本的に発生しません。
そこで、Zuoraのティエン・ツォさんは、SaaSにおける従量課金に対応した支払いシステムであるZuoraを開発しました。
元々はSalesforceの方々がサブスクリプションビジネスをSaaSビジネスの中でやり始めたからこそ生まれた概念ですので、Salesforceが生みの親であるとも言えると思います。
このように、「SaaS」や「サブスクリプション」等、現在のビジネストレンドになるようなビッグワードを複数生み出した、という意味では、Salesforceは本当にすごい会社だと言えます。
様々な形態のサブスクリプション
今や様々なサービスがサブスク、と言っている状況ですが、
BtoBの分野で言えば、サブスクリプションよりはいわゆる受託開発と呼ばれる「システムを1つ納品するのに数千万かかります、大きいシステムであれば数億円です」といったビジネスモデルが主流でした。
もちろんECや通販といった領域において、定期購入というビジネスモデルも昔から存在はしていましたが、BtoBの世界でサブスクリプション的に月額課金をしていこう、というアイディアはSaaSから生まれたものになります。
サブスクリプションと言うと「月額」というイメージがある一方で、BtoBだと年間一括払いのイメージもあると思いますが、いずれもサブスクリプションと呼ぶことができます。
Salesforceが最初に「12ヶ月分、前金でいただきます」という年間一括払いのビジネスモデルを始めました。このモデルだと、キャッシュフローとしては先にお金が入ってくるため、経営的に大きなメリットがあります。
そこで、他のSaaSベンダーも見習って「6ヶ月」「1年間」といった形で一括払いの請求方法に変えていったという歴史があります。
つまり、ビジネスモデルの1つの選択肢として、月額課金だけでないサブスクリプションのやりやすさも増えてきたと言うことができます。
実は・・・「カスタマーサクセス」という言葉もSalesforceが生みの親だった!?
「SaaS」や「サブスクリプション」といった誰もが知っているビッグビジネスワードをSalesforceが生み出した、という話をしてきました。
Salesforceはもう1つ、すごいビッグビジネスワードを生み出しています。
それがまさに、この記事やYoutubeチャンネルでも案内している「カスタマーサクセス」というワードです。
Salesforceは、世界で最初にカスタマーサクセスを組織的に行った会社です。
「カスタマーサクセス」は言葉は元々、Salesforceの経営理念(ビジョン、ミッション、バリュー)のうちの1つとして掲げられていました。
Salesforceは1999年に創業し、2004年にアメリカで上場しました。
上場後、彼らは財務的な分析に晒される形になったのですが、SaaSの月額課金、サブスクリプションのビジネスモデルを推進していく中で「解約率」が財務的に非常に重要な指標であることに気づいたのです。
当初Salesforceの解約率を計算したところ非常に悪い数字が出てしまい、「解約率を改善することでSalesforceの財務基盤を良くしよう」と考えた結果、「カスタマーサクセスの組織を作る」という施策として実際に動き出したのです。
そのため、SaaSで解約率を考慮してカスタマーサクセスを行うという意味だと、Salesforceは世界で最も古い、いわば「元祖」とも言える企業と言えますし、Salesforceがどのような施策を行っているのか、どういった指標を追いかけているのか、といったことを他のどの会社よりもベンチマークすべき会社であると言えます。
Salesforceはカスタマーサクセスを「会社の理念」として捉えている一面と、施策・組織・部門といった「経営施策」として捉えている一面、両方兼ね備えているのです。
その意味で、例えば自社で「カスタマーサクセス部」的な組織を配置する際には、その部門の中だけでカスタマーサクセスを取り組むのではなくて、会社経営全体としてカスタマーサクセスをやっていこうというような気概が重要です。
まとめ
世界をトップシェアのクラウドサービスであるSalesforce。
「SaaS」「サブスクリプション」といった現在のビジネスにおけるホットワード、そして「カスタマーサクセス」という言葉も、Salesforceが生み出したものです。
「カスタマーサクセスの青本」の中でも、「理念」という言葉が多数出てきます。
もともとはSalesforceの経営理念に「カスタマーサクセス」が存在し、その中で経営施策としてカスタマーサクセスという施策や組織を生み出した、という背景がわかれば納得いただけるのではないでしょうか。
自社でカスタマーサクセスの取り組みを実施するにあたっては、Salesforceを見習いながら、理念としてのカスタマーサクセスと経営施策としてのカスタマーサクセス、その両方を追求しながら取り組みを進めていただくのが良いでしょう。