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カスタマーサクセスでヘルススコアは必須ではない

  • 公開日:2023年7月31日(月)

カスタマーサクセスベンダーopenpage代表/実践カスタマーサクセス著者の藤島です。
本日はカスタマーサクセスのヘルススコアについて記事を書きました。従来のセオリーとは逆の発信として、ヘルススコアは必須ではないという内容です。

データにすべてが表れているわけではない

ヘルススコアがなぜ必要かといえば、カスタマーサクセスの目的達成のためのリードタイムが長いからです。
カスタマーサクセスの目標とは、解約阻止(契約期間の延長)と契約期間額の拡大ですが、これを行うには必要となるリードタイムが長すぎます。解約は法人取引であれば1〜2年はかかるでしょう。ただ、年単位の目標を追うことは、週次や月次の単位で動くカスタマーサクセスマネージャーにとっては大変なので、本来追いたい目標から逆算する形で、中間指標としてのヘルススコアを置くわけです。

しかし、データで顧客のすべてを表現するのは難しいです。解約や契約拡大とは、顧客の事業の優先度や、組織の課題感によって変動しえます。本質的には、この顧客の優先度や課題というのは、「顧客企業の中にある定性データ」であり、ベンダーはヒアリングをしない限り、このデータを取得することは出来ません。

状況によっては、お客様のカスタマーサクセスをするうえで本質的に非常に重要なデータを持ちえないままで、ヘルススコアを作るという失敗が見えているプロジェクトがかなり蔓延しています。

というのも、ヘルススコアは「社内で取れているデータ」をかき集めてスコア化することをします。例えば、製品活用データ、問い合わせデータ、契約管理データ、コミュニケーションデータ…などです。

持っているデータをかき集めて得点付け、色付けするということをします。
しかし、そもそも自社が持っているデータに、顧客が契約の継続や拡大を考えるうえでの重要データがなかったらどうする?ということが、完全な盲点になります。

みなさんも自分ごととして考えてみてください。
自分が何かにもっとお金を使おうと考えるとき、その営みの裏にある想いや考えは、すべてデータになっているものでしょうか?

例えば、痩せたいのでジムに行きたい(それは奥さんにコロナ太りをよく指摘されてウンザリしているからだ)とします。その奥さんの家庭内の指摘内容/指定回数というのは、トレーナーがハイタッチで直接聞かないと取り得ないデータです。

これと同じことがBtoB取引でもあり、●●の方針が強化されたのでxxに投資していくぞ(これは事業背景としてyyのトレンドがあるからだ)としたときに、これが契約停止や契約拡大の重要データにと関わらず、自社はそのデータを持ち得ないというケースがかなりあります。

自社が持っているデータに顧客のすべてが反映されるわけではない。だから重要ではないデータをこねくり回して、ヘルススコアを作ろうとしてしまう。すると浅いインサイトのデータだけで仕組みを作るので、結果、提案が刺さらずヘルススコアが意味がなくなる。そんな失敗が起こることのイメージが湧いたはずです。

必要なデータは製品利用とコミュニケーションのみ

openpageでも色々なデータを見ましたが、カスタマーサクセスにおいての重要データとは、製品活用とコミュニケーションデータ(特に上記で述べたような重要事項の顧客ヒアリングデータ)くらいだなと考えています。

製品活用とは、月間のアクセス状況や最新アクセス日です。これがないとさすがにフォローしたほうがいいでしょう。そして、製品資料活用はエンジニアにSQLを叩いてもらえればいかようにもデータが出せるので、これをBIやSFAにデータ格納すればいいでしょう。

そして、コミュニケーションは自社の製品(openpage)を活用して、顧客のヒアリングデータや提案反応のデータを溜める。
openpageでは顧客の戦略や課題などの定性データを管理できる機能があるので、そこにデジタルデータとして蓄積していく。
これが、必須でカスタマーサクセスに必要なデータ管理です。

ログイン状態と、主要機能の利用数で利用状況をチェックし、その背景にある戦略、課題、悩み、取り組みなどの定性データはopenpageで管理する。極論他のデータはいらない(入れても重要変数になり得ない)というのが、最近の私の考えです。

ヘルススコアだけでカスタマーサクセスのタスクを作り込むのは「顧客視点」ではない

ヘルススコアは、ツールの仕様上、ハイタッチのカスタマーサクセス担当のタスクとセットで作りこんだりします。
しかし、上記の通り、社内で取得できただけのデータで、カスタマーサクセス目標に対する重要変数がない状態で作ったヘルススコアに囚われすぎると、目線が社内に閉じてしまいます。

顧客視点にたてば、顧客の業務目標の達成、仕事の成功が大事なので、本質的にはベンダー内のデータではなく顧客が持っているデータ(例えば、先月行われた戦略発表会のスライドの注記コメント)が大事だったりします。

顧客の仕事を助け、効率化したり最大化したりするというのがカスタマーサクセスの仕事のため、必要な情報は顧客側のほうに多くあるのです。

①「御社の戦略上、xxが重要だと思います。xx部長様も鼻息を荒くしてるとのことですので、肝になりそうですね。今期はxxの取り組みからご支援させていただきます」
②「弊社のyyという機能を使ってる頻度が落ちてて、スコアが下がっている。どうやらサポートに問い合わせ連絡もあったみたいなので、yyのサポートをしますね」

この、①②の提案を比べたときに、どちらが本質的なカスタマーサクセス提案なのかは一目瞭然でしょう。

そして、①を話すためのデータは自社が持っているデータに含まれていない可能性が大きい(ハイタッチCSがヒアリングしなければならない)ので、②のように持っているデータだけでタスクを組み立てると、顧客視点がないへんてこなカスタマーサクセスの行動になりえるのです。

持っているデータだけでアクションすると痛い目をみる

もう少しわかりやすい例を出しましょう。

例えば好きな異性がいたとします。LINEの連絡回数がヘルススコアとして取れていたとして、LINEの回数が月間xx件以下なのでxxのタスクをする、と行動をセットしたときに何が起こるでしょうか?

そう、アプローチの質が低くなります。

・スポーツが好きなので一緒にジムに行った回数
・アニメが趣味で好きなアニメの共通数

などが、本当はこの恋愛にプラスの変数かもしれないにも関わらず、取れているデータだけで行動をしている状況です。

そもそも、ヘルススコアを見て、LINEのやり取りが少ないから連絡回数を上げなきゃ、と取り組んでも、それが相手にとってプラスではなかったりします。

それよりは、そもそもの自分磨きをする(製品の質を上げる)、ラブレターを出す(しっかり提案を考えでハイタッチ提案を行う)、よく話を聞く(いきなり提案するのではなくヒアリングする)…のほうがプラスになることがあります。

持っているデータと、求められる提案のズレ、の意図をご理解いただければ幸いです。

Bマーケにおいてもスコアは機能しにくい

実はマーケティングにおいてもスコアリングが機能してない事例が多くあります。

企業が配信するメールのセグメント分けやロジック分けにスコアリングが使われるのですが、実態は一斉配信とさほど変わらないので一斉メールを送る、というシーンは数多くあります。
そもそも、オファー(提案)の内容自体が、浅いデータから作りあげたものなので、訴求力が弱いのです。

そのような経験は、ご自身の接点を持った企業からの連絡(セグメント配信されているであろう自動連絡)でイメージが湧くはずです。

データを見て個別最適な提案をすることがスコアリングの価値だけれど、そもそも提案品質を上げるのはデータの力というより定性的な顧客理解力と提案力のほうが大事なこともあります。

openpageの定性データの管理

openpageだと、このヘルススコアの構造に気づき出してから、定性情報の収集に力を入れ始めました。
openpageの機能開発としても、顧客のヒアリングデータや、ステイクホルダーのデータを蓄積して、ハイタッチのアカウントプランニング(個別提案)が出来る方向に開発を注力しました。

カスタマーサクセスの本質は、顧客と伴奏するパートナーや、専門家としてのコンサルティングだと思いますので、データ蓄積の機能は作りつつも、提案力強化に振った機能に投資をしています。

最近は、この弊社が持つ定性データを使い、ヘルススコアver2を作ろうとするopenpageの導入企業様も増えてきており、ヘルススコアが悪いというよりは、そもそも従来型のヘルススコアに重要な変数を入れれるようにしようという観点で取り組んでいます。

ヘルススコア施策はなんとなくやらない

このような背景もあって、とりあえずヘルススコアを作るという動きには、かなり反対しています。
失礼を承知で、そのヘルススコアは意味をなしてないですよ、とストレートに伝えることもあります。

意図としては、いきなりスコアに飛びつくよりと、まず基本的な製品利用データの計測と、定型的なヒアリングデータの管理をして、これを見て業務を回すという基本的なカスタマーサクセスの土台作りの方が、優先度が高いのではないか?という考えからそうお伝えしています。

どの会社様を見ても、ヘルススコアが軌道に乗っているのはCS歴3〜5年で相当数の試行錯誤が行われた後のフェーズであることが多いです。

なので、なんとなくヘルススコアと飛びつく前に、自社のカスタマーサクセス目標、そこの提案を行ううえで必要なデータ、実際に顧客に行うべき提案、そこから想定される双方のタスクなどを土台として整理することをおすすめしています。

カスタマーサクセスのご相談はopenpageに

カスタマーサクセスを行うために必要なデータ、提案やタスクの整備といった事始め〜運用改善のご相談がopenpageでは増えております。
スタートアップのSaaSから、大手企業のERPまで豊富な事例がございますので、自社の課題感やご状況などお伝えいただければ、うまくいくための最適な取り組みをご一緒に考えて、提案いたします。

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