書籍紹介:中内崇人氏の『営業実行学 やりきる組織は、設計できる』ーまさに営業変革の実践論

  • 公開日:2026年9月15日(火)
 

中内崇人氏の『営業実行学 やりきる組織は、設計できる』を紹介。SALESCORE代表による、営業変革の実装論だ。


営業DX、SFA、セールスイネーブルメント、生成AI。打ち手はどれも合理的なはずなのに、数か月経つと同じ光景が現れる。SFAは入力作業に堕し、会議は増えるが受注率は動かない。一部の優秀営業だけが新しいやり方を回し、現場は「また新しい施策か」と冷めていく。マネジャーはKPIを追うだけになり、施策の名前だけが残って行動は変わらない。

本書はこれを「現場が悪い」「戦略が足りない」で説明しない。変革が日常の行動として続く設計そのものが欠けている、と見る。

変革の定着不等式

本書の骨格は一つの式に集約される。

定着負荷 < 組織実行力

ある施策が定着するかどうかは、現場にかかる摩擦の総量である定着負荷と、決めたことを実行し続ける組織の力である組織実行力の大小で決まる。負荷が実行力を上回れば、どれほど正しい施策でも必ず形骸化する。

定着負荷は、単に忙しさのことではない。CRMの入力項目を増やす、KPIを重ねる、既存業務を減らさずに新しい研修やツールを積み増す。経営から見れば合理的でも、営業個人から見れば「顧客と向き合う時間を削って仕事だけ増やす施策」に映る。ここに号令を重ねても続かない。

一方の組織実行力は、根性や個人能力の合計ではない。経営から現場マネジャーまで言うことが一貫していて、目標と日常行動のつながりが見えていて、実行が可視化され振り返られる。マネジャーが管理者ではなく実行支援者として機能している。この状態を指す。

つまり変革は大きくすればいいわけではない。負荷を小さくし、実行力を少しずつ高めていく方が、結果的に組織の文化として残る。本書はこの前提のもと、やることを絞る、スモールウィンで小さく始める、仕組みで摩擦を減らす、火をつける、実行のリズムをつくる、という5原則で具体化していく。

openpageのDSRの定着にも

我々がデジタルセールスルーム(DSR)を展開している現場でも、まさに同じ力学が働くだろう。

DSRはPowerPoint提案やWord議事録をopenpageに置き換え、営業のヒアリング、提案、ネクストアクションをデジタル管理する仕組みだ。顧客の反応を計測することで提案の効果測定ができ、そのデータをAI処理することで確率論的に精度の高いアプローチが可能になる。ビックカメラ様は営業工数を1/4に、キヤノンマーケティングジャパン様は売上を6倍に伸ばしている。セールステックとしてSFA以上の成果が出ている領域だ。


ただし、導入して即この結果になったわけではない。実際は、現場での小さな成功体験を何度も重ねた結果である。まさに本書のスモールウィンと実行のリズムの話そのままだ

一方で世の中には、とりあえずSFAを入れっぱなしにしたり、流行りだからと文字起こしAIを入れたりと、ツール購入で思考停止する取り組みも多い。そしてSFAの失敗体験が現場の意欲を強く削ぎ、次の営業企画がまた形骸化していく。この負のループを止めるには、ツール選定ではなく定着の設計に手を入れるしかない

セールステックを入れたのに動かないと感じている人、営業変革の定着に懸念がある人にこそ、本書は効くだろう。

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