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【徹底解剖】SansanのIRをカスタマーサクセス視点で分析!

  • 公開日:2023年12月30日(土)

 

 

今回のテーマは、カスタマーサクセスで有名な日本を代表する企業、Sansan社です。
CMで有名な名刺管理サービスに留まらず、様々なサービスを展開しているSansan社。

IR情報から、そのプロダクトの戦略や、カスタマーサクセスの取り組みへの影響について解説します。

Sansanのカスタマーサクセス!:「Bill One」のクロスセルで契約単価を上げている!

SaaS企業は重要経営指標としてARR・MRRを追っていますが、Sansan社も例外ではありません。
ARR・MRRを上げていくための戦略として、
新規の顧客層を広げる、あるいは既存顧客のアップセルをする、といった方向性が挙げられます。

一方Sansan社は、アップセル、というよりも「Bill One」という新製品のクロスセルに注力されているように見受けられます。
「Bill One」は請求書管理等を軸にした会計系ツールですが、請求書をSansanのオペレーターの方が裏で1件ずつ読み取り、会計ツールに反映させています。

Sansan社は「Sansan」という名刺管理サービスを展開されていますが、
Sansanのスキャナで読み取った名刺データをオペレーターがテキスト化して登録する、というオペレーションを確立しているため、
それを会計領域にも広げていこう、というのがこのBill Oneなのです。

Sansan社のカスタマーサクセスでは、このBill Oneをクロスセルで売っていくという取り組みを進めています。

名刺管理ツールのSansanは「管理する名刺が増えるほど売上が上がる」仕組みですが、Bill  Oneも同様に「請求書の枚数が増えれば増えるほど売上が上がる」という仕組みになっており、
カスタマーサクセスもこの指標(=請求書の枚数)を追いながら売上の最大化を目指しています。

Sansan社は、社風としては営業もゴリゴリやっていく強い会社ですので、
営業からカスタマーサクセスの方にBill Oneの案件がどんどんパスされ、
カスタマーサクセスの方も「営業」的な観点がかなり求められていると考えられます。

Bill Oneに限らず、SaaS上場企業では「他プロダクトへのパス率」「クロスセル金額」等をKPIとして設定しているケースも増えています。

Sansanのカスタマーサクセス!:「営業DX」を軸にしたプロダクト展開

Sansan社のプロダクトとしての基本戦略は、
名刺管理ツールのSansanをはじめとした「営業DX」という広いテーマの中でサービスを展開し、顧客拡張を図ることです。

名刺管理ツールでは、名刺を取り込んで「営業」に使います。
取り込んだ名刺データを元に、その方がどこに異動あるいは転職したのか、
今自社がどの会社・どの部門のキーパーソンの名刺を持っているか、等を把握することができます。
つまり「名刺」をキーにしたCRMシステムであると言えます。

Sansan社は、自社プロダクト戦略として「営業DX」を掲げていますが、
関連する言葉として、アメリカで流行っている「セールステック」という言葉があります。

セールステックとは、CRMをはじめとした営業管理的な機能以外にも、
CLM(※1)システム、見積もりシステム(CPQ ※2)といった機能が挙げられます。

これらの機能は、セールステックのサービス自身で提供することもあれば、
こういった製品と連携することを主軸としたサービスもあります。

※1:Contract Lifecycle Management:契約ライフサイクルマネジメント、契約の締結前から締結後の管理・更新業務に至るまでのフローを管理し、最適化すること
※2:Configure(部品構成)、Price(価格)、Quote(見積書)の頭文字をそれぞれ取った言葉で、顧客ごとの個別の見積もりが必要な場合に、フローを機械的に一元管理する仕組み

Sansan社も「Contract One」という契約管理システムや名刺作成サービス等も扱っており、営業DXという文脈で、名刺管理に止まらない価値提案にチャレンジしています。

カスタマーサクセスの観点から言えば、
これまで単一プロダクト、単一領域で進めていた取り組みや提案の幅がより広がっていく、とも言えます。

製品を広げていくことでお客様の属性も広がるし、
クロスセル可能な、価値提供できるラインナップを増やしていくことができます。
結果的に様々な製品を組み合わせながら、既存顧客からの売上=NRRを上げていくということが、
Sansan社のプロダクトの基本方針だと感じました。

Sansanのカスタマーサクセス!:名刺アプリ「Eight」のポテンシャルと展開の難しさ

さらに、Sansan社のサービスで言及すべきものとして名刺アプリ・SNS機能を有する「Eight」が挙げられます。

Eightには、まだまだマネタイズできるポイント、あるいは成長の可能性を模索しているように感じられます。
まだまだ「Sansan社の事業基盤」とまではまだ言えない、一言で言えば「迷子」状態になっている部分もあるのではないでしょうか。
IR資料等を見る限りではBill Oneの方が経営的な優先度が高くなっているように見受けられます。 

Eightはメニューが多く、カスタマーサクセスの観点から見ると「マネタイズのバリエーションが多い」ことが挙げられます。
(例えば、Eightを使って採用ができる、広告が打てる、さらに名刺管理のSansanと連携させて営業管理もできます、等。)

これは裏を返せば、カスタマーサクセスとして相対すべき顧客の部門が多岐に渡ってしまい、フォーカスした取り組みを実践しづらい、ということです。
さらに、本当はハイタッチで他部門開拓をしながらマネタイズをしていきたいはずですが、
Eightは単価が低いこともあり、うまくマネタイズもできていないのではないでしょうか。

Eightは、本来であればもっともっと売れるポテンシャルがあるはずです。
カスタマーサクセス活動ができずにお客様任せになってしまっている現状もあるのではないでしょうか。

今後マネタイズをどううまく進めていくか、具体的には単価を上げていくかが鍵になるでしょう。
カスタマーサクセスの観点だと、Eightは単価が低いためハイタッチの取り組みは出来ないはずで、
いかにCS活動の工数を押さえ、Eightの多様なマネタイズを実践できるか、が重要です。

ただ、非常に難易度の高い取り組みになりますので、現状は様々に模索されているのだろうと考えています。

今回はSansan社に絞って解説しましたが、
上場SaaS企業のIRから学べることはたくさんありますので、ぜひ皆様も参考にされてみてはいかがでしょうか。

もう少し論点を深掘りしたい、といったご希望があれば、
弊社openpageがディスカッションパートナーにもなりますので、ぜひお問い合わせいただければ幸いです。

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