「SFAを使いこなせない会社」に必要なのは、SFAの代わりではなく、SFAより前の営業基盤だ

  • 公開日:2025年12月22日(月)

先日、ある営業マネージャーと話す機会があった。彼の会社は3年前にSalesforceを導入し、現在も運用を続けている。ライセンスは全営業に配布され、毎週の営業会議では必ずSalesforceの数字を見る。一見、うまく回っているように見える。

しかし彼はこう言った。「正直なところ、数字しか入っていないんです。案件の金額、確度、次回商談日。それだけ。本当に知りたい情報——なぜこの金額なのか、顧客の課題は何か、競合はどう動いているのか——は、全部営業の頭の中か、議事録のどこかにバラバラに散らばっている」

これは、SFAが定着しない企業の典型的な構造だ。入力率は高い。しかし入力されているのは「数字」だけ。商談の中身、つまり定性情報は、どこにも集約されていない。

我々openpageがデジタルセールスルームを開発する中で気づいたことがある。SFAが使われない理由は、「操作が難しい」「入力項目が多い」といった表面的な問題ではない。もっと根本的な構造がある。それは、SFAに入力すべき情報が、そもそも営業の手元に整理された形で存在していないという事実だ。

「入力する」前に、「記録する場所」がない

SFAに何かを入力する、ということは、その情報がすでに営業の手元に明確な形で存在していることが前提になる。しかし現実はどうか。

商談後、営業は何をしているか。メールで議事録を送る。提案資料を別のメールで送る。見積もりをExcelで作ってまた別のメールで送る。その後、上司に口頭で報告し、個人のメモ帳に走り書きを残し、次の商談の準備に入る。

この時点で、商談の情報はすでに複数の場所に分散している。そしてSFAには「次回商談日」と「見積金額」だけが入力される。なぜか。それ以外の情報を「まとめて入力する」という作業が、営業にとってあまりにも面倒だからだ。

さらに言えば、営業自身も「何を記録すべきか」が明確ではない。顧客の課題感、決裁者の反応、競合の動き、社内の合意形成の進み具合。これらは営業の頭の中では「なんとなくわかっている」が、言語化されていない。言語化されていないものは、入力できない。

つまり、SFAが定着しない本質的な理由は、入力する前の段階で、情報が構造化されていないという点にある。

SFAが得意なことと、苦手なこと

SFAは優れたツールだ。パイプライン管理、売上予測、レポート作成。これらは間違いなくSFAの得意領域であり、経営やマネジメントにとって不可欠な機能だ。

しかし、SFAには決定的に苦手なことがある。それは、営業の日々の顧客対応そのものをデジタル化することだ。

営業が顧客とやり取りする中で生まれる情報——提案内容、議事録、合意事項、課題感、関係者の反応——これらは、SFAに「入力する」ものではない。そうではなく、顧客とのやり取りの中で自然に記録され、蓄積されていくべき情報だ。

ここに、SFAとデジタルセールスルーム(DSR)の本質的な違いがある。SFAは「管理するためのツール」であり、DSRは「顧客と対話するためのツール」だ。

我々がopenpageで実現しようとしているのは、この「対話の中で自然に情報が記録される」という仕組みだ。顧客ごとに専用ページを作り、提案資料、見積もり、議事録、タスクを一か所にまとめる。顧客がどの資料をどれだけ見たかがリアルタイムでわかる。次回の商談で話すべきことが、自然と明確になる。

これは、SFAの代わりではない。SFAに入力する前の、顧客接点をデジタル化する基盤だ。

「SFAの前に、DSR」という順番

多くの企業は、「まずSFAを入れて、次に高度なツールを」と考える。しかし実は、この順番を逆にした方がうまくいくケースが増えている。

なぜか。顧客とのやり取りをデジタル化し、そこで生まれた情報の構造を整理してから、SFAの項目設計をする方が、圧倒的に定着しやすいからだ。

具体的には、こういう流れだ。

まず、営業が顧客ごとに専用ページを作り、提案資料や議事録を共有する。顧客の反応を見て、次のアクションを決める。このプロセスを繰り返す中で、「どの情報を記録すべきか」「どの項目が商談の進捗を左右するか」が自然と見えてくる。

その後、この構造をSFAに落とし込む。すると、SFAへの入力は「すでに整理された情報を転記するだけ」になる。営業にとって負担が少なく、定着率が上がる。

これは単なる理想論ではない。実際に、SFA定着に苦しんでいた企業が、DSRを先に導入することで、SFAの活用度が劇的に改善した事例がある。

SFAとDSRの役割分担

SFAとDSRは、競合関係ではなく、補完関係にある。それぞれが得意な領域で役割を果たすことで、営業組織全体の効率と成果が最大化される。

SFAは、商談の「数字」を管理する。金額、確度、ステータス、担当者。これらの定量データをもとに、パイプラインを可視化し、売上予測を立て、組織全体の状況を把握する。

一方、DSRは、商談の「中身」を管理する。提案内容、議事録、合意事項、課題感、関係者の動き。これらの定性データをもとに、顧客体験を向上させ、受注率を高め、再現性のある営業プロセスを構築する。

理想的な構造は、こうだ。

商談の中身はDSRで管理し、そこから必要な項目だけをSFAに連携する。これにより、SFAへの入力は最小限に抑えつつ、「どんな提案をした結果、数字がこうなったのか」という因果関係まで追えるようになる。

この二層構造が機能すれば、営業現場の負担は減り、マネジメントの解像度は上がる。そして何より、顧客にとっての体験が向上する。

「入力が続かない」組織ほど、DSRから始めるべき理由

SFAへの入力が続かない組織には、共通する特徴がある。それは、営業が「入力すること」にベネフィットを感じていないという点だ。

なぜベネフィットを感じないのか。それは、入力した情報が、自分の営業活動に直接的に役立たないからだ。SFAに入力しても、商談の準備が楽になるわけではない。顧客への提案が改善されるわけではない。ただ、マネージャーに報告するため、経営に数字を見せるために入力している。

これでは続かない。

一方、DSRは違う。営業が顧客とやり取りする中で、自然と情報が記録される。そして、記録された情報は、次の商談の準備に直接使える。顧客がどの資料を見たかがわかれば、次に何を話すべきかが明確になる。議事録を共有すれば、顧客側の関係者にも情報が行き渡る。

つまり、DSRは営業にとって「入力するツール」ではなく、「顧客対応を楽にするツール」として機能する。だから続く。

そして、DSRで情報が整理された状態で、SFAに必要な項目だけを転記すれば、SFAへの入力も負担にならない。

あなたの会社は、どこから始めるべきか

もしあなたの会社が、以下のような状況にあるなら、SFAを「やり直す」よりも、DSRを先に導入した方が投資対効果は高い。

SFAを導入したが、入力率や活用度が低い。商談の中身は、個人のメモや議事録ファイルに散らばっている。提案資料の最新版管理や共有リンク管理で、毎回混乱している。担当が変わるたびに、「この顧客、何が決まっていて何が宿題か」がわからなくなる。マネージャーが「パイプラインの数字」だけでなく「背景」を理解したいが、その情報がどこにも集約されていない。

これらは、SFAの問題ではない。SFAに入力する前の段階で、情報が構造化されていないことが問題なのだ。

だからこそ、顧客接点のデジタル化から始めるべきだ。営業が顧客とやり取りする中で、自然と情報が記録され、蓄積される仕組みを作る。その上で、SFAの項目設計を見直し、必要な情報だけを連携する。

この順番であれば、営業現場の負担は減り、マネジメントの解像度は上がり、顧客体験は向上する。そして何より、SFAが本来の力を発揮できるようになる。

営業DXの順番を、見直してみてはどうだろうか。もし顧客接点のデジタル化に関心があるなら、こちらを見てほしい。我々が目指している世界観が伝わるはずだ。

大手企業にも選ばれているデジタルセールスルーム:openpageの資料ダウンロードはこちら

 

新規CTA
新規CTA

最新記事