SFAを導入しても営業が変わらない、本当の理由ーメーカー営業の属人化は、SFAでは解決できない

  • 公開日:2025年12月12日(金)

2025年も終わりに近づいた今、多くのメーカー企業がSFAやCRMを導入している。しかし、経営層が期待したような営業改革は起きていない。システムはあるのに、案件の進捗は相変わらず不透明で、営業のノウハウは特定の人間に集中したままだ。

「営業がちゃんとデータを入力しないからだ」と言う声もある。確かにそうかもしれない。だが、それは本質ではない。

SFAが機能しない理由は、メーカー営業が抱える構造的な問題にある。


「入力する意味」が見えない営業現場

ある製造業の営業部長と話す機会があった。同社は数年前にSFAを導入したが、ほとんど活用されていないという。営業担当者に理由を聞くと、こんな答えが返ってきた。

「入力したところで、何も変わらないんです」

この言葉は重い。営業担当者にとって、SFAへのデータ入力は「上司に報告するための作業」でしかない。顧客との関係が深まるわけでもなく、提案の質が上がるわけでもない。ただ管理のためのデータを入れるだけだ。

しかも、メーカー営業の多くは流通を挟んでいる。営業が頑張って顧客に提案しても、実際の受注は問屋や小売店を経由する。だから「自分の努力と売上の因果関係」が見えにくい。SFAに入力したところで、結果に紐づかないのだから、モチベーションが上がるはずもない。

つまり、営業担当者にとってSFAは「負担だけがあって、リターンがない仕組み」なのだ。


属人化の本質は「知識の集中」ではなく「共有の不在」

メーカー営業のもう一つの課題は、極度な属人化だ。膨大な製品知識、顧客ごとのカスタマイズ対応、現場ごとの最適提案ノウハウが、特定の営業担当に集中している。「この人でないと分からない」状態が慢性化し、人材育成や業務引継ぎが困難になっている。

この問題をSFAで解決しようとすると、どうなるか。営業プロセスを細かく分解し、各ステップでの行動を入力させる。顧客の反応を記録させる。商談の進捗を可視化する。

理屈としては正しい。だが、現実には機能しない。

なぜなら、営業のノウハウは「どういう順序で何をしたか」というプロセスだけでなく、「顧客がどう反応し、それに対してどう対応したか」という文脈の中にあるからだ。SFAのフォーマットに沿って入力された断片的なデータからは、その文脈が見えない。

結果として、SFAには「形式的な報告」だけが残り、営業のノウハウは依然として個人の頭の中に留まり続ける。


流通構造という「見えない壁」

メーカー営業には、もう一つ独特の構造がある。企画→営業→流通→顧客という多層構造だ。

営業担当者は顧客に直接アプローチし、課題をヒアリングし、提案する。しかし、見積もりは流通を経由する。受注データも流通経由で入ってくる。つまり、営業の頑張りと数字が直結しない。

この構造では、対流通の関係強化と対顧客の関係構築の両方を管理しなければならない。だが、SFAは基本的に「自社と顧客の一対一の関係」を前提に設計されている。流通という中間層を挟んだ複雑な構造には対応していない。

結果として、営業担当者は「誰に対して何を報告すればいいのか」が曖昧になり、SFAへの入力は形骸化する。


デジタル化の物理的制約

さらに厄介なのは、物理的な制約だ。メーカー営業は工場での商談が多い。立ち話での商談も頻繁にある。そういう場面で、PCを開いてSFAに入力することは現実的ではない。

「後で入力すればいい」と思うかもしれない。だが、人間の記憶は曖昧だ。商談が終わって数時間後、オフィスに戻ってから思い出しながら入力したデータに、どれだけの精度があるだろうか。

顧客の反応、微妙なニュアンス、その場の空気感。こうした情報は、時間が経つほど失われていく。結果として、SFAに残るのは「商談した」という事実だけで、「どんな商談だったか」という本質的な情報は抜け落ちる。


営業を変えるのは「管理」ではなく「共有」

ここまで見てきたように、メーカー営業がSFAで変わらない理由は、SFAが「管理のためのツール」だからだ。

営業担当者にとって、SFAは「上司に報告するもの」であり、「自分の仕事を楽にするもの」ではない。だから、入力は後回しになるし、形式的な内容しか残らない。

では、どうすればいいのか。

営業を変えるために必要なのは、「管理の強化」ではなく「共有の仕組み」だ。

営業担当者が顧客と対話した内容を、その場で記録し、顧客と共有する。流通パートナーとも共有する。社内の他の営業担当者とも共有する。こうした「共有」が自然に行われる仕組みがあれば、営業のノウハウは組織全体に蓄積されていく。

我々がopenpageで実現しようとしているのは、まさにこの思想だ。


議事録ベースの軽量運用

openpageの基本は「議事録を書く」というシンプルな行動だ。商談が終わったら、顧客と話した内容をブログのように書く。それだけだ。

SFAのように「案件フェーズ」「受注確度」「予定金額」といった項目を埋める必要はない。ただ、「顧客が何を言っていたか」「自分が何を提案したか」「次に何をするか」を書く。

この議事録は、顧客に共有される。顧客は専用ページにアクセスし、議事録を読むことができる。つまり、営業担当者が書いた内容は「報告書」ではなく「顧客への提案資料」になる。

この構造が重要だ。営業担当者にとって、議事録を書くことは「上司への報告」ではなく「顧客への価値提供」になる。だから、自然と丁寧に書くようになる。商談の文脈も、顧客の反応も、きちんと記録される。


眼前可視化という考え方

もう一つ重要なのは「眼前可視化」(詳細はこちら)という考え方だ。

これは、商談中にリアルタイムで議事録を見せながら、顧客と認識を合わせていく手法だ。営業担当者が「今日お話しした内容はこういうことですよね」と画面を見せながら確認する。顧客も「そうそう、そういうこと」と頷く。

この瞬間、営業担当者と顧客の間に「共通理解」が生まれる。

従来の営業では、商談が終わった後に議事録を書き、後日メールで送る。だが、それでは認識のズレが起きやすい。顧客が「そんなこと言ってない」と思っても、もう商談は終わっている。

眼前可視化では、その場で認識を合わせるから、ズレが起きない。しかも、顧客は「この営業担当者は、ちゃんと自分の話を聞いている」と感じる。信頼関係が深まる。


専用ページでのステークホルダー管理

メーカー営業の複雑さは、流通を挟んだ多層構造にある。この問題をopenpageは「専用ページ」で解決する。

顧客ごとに専用ページを作り、そこに資料・動画・議事録を一元管理する。このページには、流通パートナーも、販売店も、エンドユーザーも招待できる。つまり、関係者全員が同じ情報を見られる。

営業担当者は「誰に何を伝えたか」を管理する必要がない。専用ページに情報を集約すれば、関係者全員がアクセスできる。しかも、誰がどの資料を見たか、どのくらい関心を持っているかも可視化される。

この透明性が、流通構造の複雑さを解消する。


段階的な知識資産化

属人化の問題も、openpageの仕組みで解決できる。

トップセールスが書いた議事録は、そのまま「提案の型」になる。新人営業はその議事録を読めば、「どういう順序で何を話せばいいか」が分かる。顧客の反応も記録されているから、「こういう質問が来たら、こう答えればいい」というノウハウも共有される。

膨大な製品知識を一度に標準化する必要はない。頻出するパターンから蓄積していけばいい。商談を重ねるごとに、組織全体の知識資産が増えていく。

これが、営業のノウハウを「個人の頭の中」から「組織の仕組み」に移行させる方法だ。


現実的なデジタル化

物理的な制約についても、openpageは現実的なアプローチを取る。

工場での商談では、モバイルディスプレイやタブレットを持参すればいい。立ち話の商談では、スマホで録音し、AI文字起こしツールで整形してから共有すればいい。

完璧を求める必要はない。できる範囲から始めればいい。重要なのは、「顧客との対話を記録し、共有する習慣」を作ることだ。

メーカー営業の現場には、メール環境を持たない顧客も多い。だが、だからといって全てを諦める必要はない。デジタル化できる部分から始め、少しずつ範囲を広げていけばいい。


営業の本質は「透明性」にある

SFAが機能しないのは、営業担当者にとって「負担」でしかないからだ。だが、openpageは違う。議事録を書くことが、そのまま顧客への価値提供になる。専用ページを作ることが、関係者全員の透明性を高める。

営業のデジタル化とは、管理を強化することではない。顧客との対話を透明にし、関係者全員が同じ情報を見られる状態を作ることだ。

その透明性の中で、営業のノウハウは自然と組織全体に共有され、属人化は解消され、提案の質は標準化されていく。

もしあなたの会社がSFAを導入しても営業が変わらないと感じているなら、問題はツールではなく、透明性の欠如にあるのかもしれない。営業を変えたいなら、管理を強化するのではなく、共有の仕組みを作ることだ。

我々の考える営業の未来については、こちらの動画で詳しく説明している。もし興味があれば、見てほしい。

あなたの会社の営業は、本当に「透明」だろうか?

 
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