営業DXと聞いて、多くの企業が最初に導入を検討するのはSFA(営業支援システム)だろう。案件管理、売上予測、活動履歴の記録。確かにこれらは営業組織の可視化に役立つ。
しかし、ソリューション営業においては、この順番が根本的に間違っている可能性がある。
SFAは「誰が、いつ、何をしたか」を記録するシステムだ。つまり社内向けの管理ツールである。一方で、ソリューション営業の本質は何か。複雑な提案を、複数の関係者に、段階的に理解してもらい、組織として意思決定を促すプロセスそのものだ。
この「提案プロセス」がデジタル化されていない状態で、いくら「活動ログ」を蓄積しても意味がない。顧客がどの資料をどう見て、誰が何を理解し、組織内でどう共有されているのか。この決定的な情報は、SFAには一切記録されない。
我々openpageでは、営業プロセスそのものを顧客と共有できる仕組みを「デジタルセールスルーム(DSR)」として開発してきた。ソリューション営業の現場を見続ける中で確信したのは、営業DXの最初の一手は、SFAではなくDSRであるべきだということだ。
以下、その理由を構造的に説明したい。
SFAが解決してくれること、してくれないこと
SFAの価値を否定するつもりはない。案件数の把握、売上予測の精度向上、商談履歴の蓄積。これらは営業組織のマネジメントにおいて重要な機能だ。
しかし、SFAが管理しているのは「営業担当者の行動」である。いつ訪問したか、誰と会ったか、次回アクションは何か。すべて営業側の視点だ。
ソリューション営業で本当に知りたいのは、そこではない。
提案した内容を、顧客の誰が読んだのか。技術資料は理解されたのか。経営層には情報が届いているのか。社内で反対意見を持っている人は誰なのか。こうした「顧客側の動き」こそが、受注を左右する決定的な情報だ。
SFAに「部長に提案資料を送付」と記録しても、その部長が資料を開いたかどうかはわからない。開いたとして、どのページを重点的に見たのかもわからない。その情報を誰かに転送したのかも、もちろんわからない。
つまり、SFAは「営業が何をしたか」は記録できるが、「顧客が何を見て、どう動いたか」は一切記録できない。ソリューション営業において、後者の方が圧倒的に重要であるにもかかわらず、だ。
デジタルセールスルームという選択肢
デジタルセールスルーム(DSR)は、顧客ごとにパーソナライズされた提案用のマイクロサイトを作成し、資料・議事録・FAQ・ネクストアクションを一元化する仕組みだ。
重要なのは、これが「顧客と共有される場」であるということだ。営業担当者だけが見るSFAとは、本質的に異なる。
DSRでは、顧客がどの資料をいつ開いたか、どのセクションを何度も見返しているか、誰が新たにアクセスしたかが可視化される。提案内容に対する反応が、リアルタイムで見える。
これは単なる「閲覧ログ」ではない。顧客の関心、理解度、社内展開の進捗が、行動として可視化されるということだ。
たとえば、技術仕様書が繰り返し閲覧されているなら、技術的な懸念があるのかもしれない。価格表が見られていないなら、まだ予算承認のフェーズに入っていない可能性がある。経営層のアカウントがアクセスしてきたなら、稟議が上がったサインだ。
こうした情報があれば、次の打ち手が変わる。電話一本で解決できる懸念を放置せずに済む。まだ見られていない資料を無理に説明して時間を無駄にすることもない。営業の精度が、構造的に上がる。
我々が眼前可視化営業と呼んでいるのは、まさにこの思想だ。提案内容を「顧客の眼前」で可視化し、同じ画面を見ながら対話する。情報の非対称性を解消し、顧客が迷子にならない状態を作る。
なぜ「最初のDX投資」としてDSRなのか
ここで問いたいのは、投資の順番だ。
多くの企業は、営業DXと聞いてまずSFAを導入する。しかし、SFAは導入直後から現場の負担が増える。案件情報の入力、活動履歴の記録、週次レポートの作成。管理側には便利でも、現場には「入力作業が増えただけ」と映りやすい。
結果として、入力が形骸化する。「とりあえず埋めておく」という状態になり、データの質が下がる。マネージャーは「ちゃんと入力しろ」と言い、現場は「入力しても意味がない」と反発する。導入失敗のパターンだ。
一方、DSRは導入直後から「顧客に見える価値」を生む。
提案がわかりやすくなる。関係者全員が同じ情報を見られる。議事録や次のアクションが整理される。顧客側のメリットが明確だ。
そして営業側も、顧客の反応が見えることで「次に何をすべきか」が明確になる。受注率が上がる。商談期間が短くなる。成功体験が生まれる。
この成功体験こそが、営業DXの起点になる。「デジタルツールを使うと成果が出る」という実感があるからこそ、次のステップとしてSFAやAI活用にも前向きになれる。
逆に、SFAから始めて現場が疲弊した状態では、次のツール導入に対する抵抗感が強くなる。「また入力項目が増えるのか」という反応になる。
つまり、DSRは「現場が納得する最初の成功」を作りやすい。だからこそ、最初の投資として合理的なのだ。
「提案の型」が先にできるから、SFAが活きる
もう一つ重要な点がある。DSRで提案プロセスが構造化されると、「どう提案すれば受注しやすいか」という型ができる。
たとえば、初回提案では必ずこの3つの資料を見せる。技術検証フェーズではこのFAQを共有する。経営層向けにはこのサマリーを用意する。こうした「勝ちパターン」が、DSRを使う中で自然に蓄積される。
この型ができた状態でSFAを導入すれば、SFAのレポートやダッシュボードにも意味のあるデータが乗る。「A社は技術検証フェーズで停滞している」「B社は経営層の承認待ち」といった情報が、構造的に整理される。
逆に、型がない状態でSFAを入れても、「訪問回数」や「メール送信数」といった表面的な活動量しか記録できない。これでは営業の質は上がらない。
つまり、DSRで提案プロセスをデジタル化し、「売り方」と「買われ方」の型を作る。その上でSFAを導入するという順番が、構造的に正しい。
openpageは、提案内容・議事録・ネクストアクションをすべてルーム内で構造化できる設計になっている。だからこそ、「提案の型」を作りやすく、その後のSFA連携にも対応しやすい。
ソリューション営業の順番は「DSR → SFA」が合理的
整理しよう。
SFAは「社内管理」のためのシステムだ。営業担当者の行動を記録し、案件の進捗を可視化する。これは重要だが、顧客体験には直接影響しない。
一方、DSRは「顧客体験」そのものをデジタル化する。提案内容を整理し、関係者全員が同じ情報を見られるようにし、顧客の反応を可視化する。これが受注率と商談スピードに直結する。
ソリューション営業において、どちらを先に整えるべきか。答えは明らかだ。
まず顧客体験をデジタル化し、提案プロセスの型を作る。その上で、社内管理のためのSFAを導入する。この順番であれば、SFAに入力されるデータにも意味が生まれ、営業組織全体の質が上がる。
逆に、SFAから始めると、現場の負担だけが増えて成果が見えず、営業DX全体に対する不信感が生まれる。これは避けるべきだ。
もしあなたの組織がソリューション営業を行っているなら、営業DXの最初の一手として何を選ぶべきか、改めて考えてほしい。「記録」よりも先に「提案」をデジタル化する。この順番が、成果を生む。
我々が目指している営業の未来については、こちらの動画で詳しく説明している。ソリューション営業を実現する具体的な方法については、こちらの資料にまとめた。
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