営業DXの分野で急成長を遂げている株式会社openpage。同社が提供するデジタルセールスルーム事業は前年比837%という驚異的な成長を記録し、キヤノンMJ(連結1.8万名超)をはじめとする大手企業への導入実績を拡大している。代表取締役の藤島誓也氏に、成長の背景と営業DXの未来について話を聞いた。
エンジニア×メディア×カスタマーサクセス──異色の経歴が生み出すイノベーション
藤島氏のキャリアは一見バラバラに見える3つの分野を横断している。エンジニア、メディア、そしてビズリーチでのカスタマーサクセス──これらの経験が現在のopenpageの強みを生み出している。
「エンジニア時代に身につけた論理的思考とシステム化の発想、メディア業界で磨いた感情に訴える表現力や編集力、そしてビズリーチでのカスタマーサクセス経験。この3つが三位一体となって現在の事業基盤となっています」と藤島氏は語る。
特にビズリーチ時代の経験は貴重だった。日本にまだカスタマーサクセスという概念が浸透していない時期から、Microsoft、Gainsight、Marketoなどの海外先進事例を研究し、日本独自の理論として設計・推進していた経験が、現在の事業の根幹となっている。
前年比837%成長を支える「顧客成果起点」の営業革命
驚異的な成長の最大要因は「顧客成果起点」の徹底だ。従来の営業が契約獲得をゴールとしていたのに対し、openpageは契約後の顧客の成功まで責任を持つ。アップセル・クロスセルも含めて、すべて顧客の成果が出ることを前提に進める営業とカスタマーサクセスの境界線を超えた統合的アプローチが特徴だ。
「『売って終わり』ではなく、『売ってから始まり』という発想の転換が、結果的に高い成長率とお客様の満足度向上の両方を実現しています」
この仕組みを支えるのは、圧倒的な情報収集と分析力だ。業界外の情報、競合情報、最新の技術動向を徹底的に収集し、Salesforce、HubSpotをはじめとする日米のあらゆるセールステクノロジーを熟知した上で、日本企業に最適化した形で提供している。
グローバル最先端の知見を日本の現場に落とし込む力
藤島氏の強みの一つは、海外の最新動向に精通しながら、それを日本の企業文化や商習慣に合わせてカスタマイズできることだ。
「アメリカのセールステック企業の手法は非常に先進的ですが、日本の企業にそのまま適用しても上手くいかないことが多い。文化的背景、意思決定プロセス、コミュニケーションスタイルなど、様々な違いがあります」
グローバルな最先端の理論と日本の現場の実情を橋渡しする役割こそが、openpageの独自性を生み出している。実際、藤島氏は日経クロストレンドやITmediaなどで最新の営業オペレーションを発信し、日経BPから『実践カスタマーサクセス』も出版している。
地方創生から大手企業まで──幅広い社会課題への挑戦
openpageの事業領域は驚くほど幅広い。キヤノンMJのような大手企業から、人口10万人から100万人を超える地方都市まで、規模や業種を問わず対応できる柔軟性が強みだ。
「地方創生プロジェクトは私にとって特別な意味があります。地方出身の原体験もあり、デジタル格差の解消や地域活性化は重要なテーマです」
現場への寄り添いを重視し、論理的なビジネスアプローチをしつつも、親身で距離が近いコミュニケーションを心がけている。技術的な専門知識があっても、それを相手に合わせて翻訳する能力が成功の鍵となっている。
独特の組織運営哲学「ノールール主義」とイノベーション創出
組織運営においても藤島氏は独特な哲学を持つ。人事制度には反対派で、Netflixを参考に極力ノールール派だ。細かいルールで縛るよりも、個人の自主性と専門性を尊重した方が、結果的に高いパフォーマンスが出ると考えている。
「関西出身者を好んで採用したり、YouTube発信でもエンタメコンテンツを混ぜたりしています。展示会でウィンナーを焼いて顧客を惹きつけたこともありますよ」
これは単に楽しいからやっているわけではなく、硬直した組織からはイノベーションは生まれないという信念からだ。フランクなコミュニケーションで硬直しない組織、それでいて個人を尊重し、突破力のある組織を目指している。
営業プロフェッショナルネットワークで業界全体を牽引
ビズリーチで培った人脈を活かし、藤島氏は業界のキーパーソンとの交流も活発だ。仮説提案営業の城野えんさんや鈴木真理さん、「おじキラー営業」で有名なIBM出身の加藤夏美さん、セールスイネーブルメント第一人者の山下貴宏さんなど、多くの営業プロフェッショナルとネットワークを築いている。
「一人では気づけない視点や、新しいアイデアの源泉になっています。それぞれが持つ専門性を掛け合わせることで、より大きなインパクトを生み出せると信じています」
生成AI時代の営業革命を先導
最新テクノロジーの活用においても藤島氏は先進的だ。生成AIについては誰よりも早く営業現場に投入し、100ページ近い現場マニュアルを作成して実用化を図った。
「エンジニア出身なので、テクノロジーの本質的な理解があることが強みです。表面的な理解ではなく、技術の可能性と限界を把握した上で、営業現場に最適化した活用方法を設計できます」
AIに任せっぱなしではなく、人間の判断との組み合わせを重視し、適切な使い分けを提唱している。
営業DXの未来予想図
今後の営業DXについて、藤島氏は明確なビジョンを持っている。
「営業は単なる売り込みから、顧客の課題解決パートナーへと確実に進化しています。データドリブンな分析と、人間ならではの共感力や洞察力の組み合わせが、これからの営業の核になります」
営業プロセスの透明性がさらに高まり、情報格差に依存した従来の営業手法は通用しなくなる。その代わりに、顧客が持っていない視点や洞察を提供できる営業が求められるようになる。
また、営業とカスタマーサクセス、マーケティングなどの境界線がさらに曖昧になり、統合的なアプローチが標準になると予想している。
社会課題解決型リーダーとしての使命
最後に藤島氏は、自らの使命について語った。
「私たちの使命は、営業DXを通じて日本企業の競争力向上に貢献することです。特に、デジタル化に遅れをとっている中小企業や地方企業への支援に力を入れていきたい」
営業の本質は、相手の課題を解決し、成功に導くことだと藤島氏は考えている。テクノロジーは強力なツールだが、最終的には人間の能力を拡張するものであって、代替するものではない。
「テクノロジーを活用しながらも、人間らしさを大切にした営業を追求していきます。現場に寄り添い、顧客の成果にコミットし、業界全体の発展に貢献する。これが私たちの目指す営業DXの未来です」
前年比837%成長という数字の背景には、こうした明確な哲学と実行力があった。藤島氏が描く営業DXの未来は、既に現在進行形で実現されつつある。
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