株式会社openpage代表取締役・藤島氏に聞く:カスタマーサクセスから営業革命へ、そして日本発クラウドの頂点を目指す理由

  • 公開日:2025年6月9日(月)

「本音をさらけ出す」ことから始まった事業転換

「庵野秀明監督がエヴァンゲリオンを創れたのは、富野由悠季監督の『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の影響が大きいんです」

株式会社openpage代表取締役の藤島氏は、意外にもアニメの話から始めた。一見、ITサービスとは無関係に思えるこの話こそが、同社の事業転換の核心を物語っている。

「『逆襲のシャア』は1988年に公開されましたが、当時は酷評され、理解されがたい作品でした。なぜなら富野監督が、従来のガンダム作品の枠を超えて、自身の本音や葛藤をストレートに作品に反映させたからです」

作品の主人公であるシャアは表向き「人類の革新」という大義を掲げているが、その実態は個人の満たされない気持ちやエゴの発露だった。劇中でシャアが叫ぶ「人間なんてダメだ!粛清してやる!」という極端な行動は、富野監督が当時感じていた人類や社会への絶望感を、そのまま登場人物に投影した結果だったのだ。

「この作品を見た庵野監督は、アニメという表現媒体でここまで作り手の個人性を打ち出せるのかと衝撃を受けました。そして自分も『本音』をさらけ出す作品を作りたいと考えた。それがエヴァンゲリオン誕生の背景にあるんです」

藤島氏の目が輝く。

「openpageのカスタマーサクセスからセールステックへの転換も、これと全く同じ構図なんです。業界の常識や建前を取り払って、本音をさらけ出したからこそ、ビジネスの本質が見えてきた」

カスタマーサクセスの「本質」への気づき

藤島氏は日本におけるカスタマーサクセス分野の第一人者として知られる。これまでに書籍執筆やブログ発信を通じて30万字以上の情報発信を行い、「日本で一番カスタマーサクセスについて語った自信がある」と語る。

カスタマーサクセスとは、BtoB企業において「顧客の成功」を支援することで解約を防ぎ、契約を継続・拡大させる考え方だ。アメリカ発のこの概念は、日本でも急速に普及している。

しかし長年この分野に携わる中で、藤島氏は業界の「建前」に疑問を抱くようになった。

「カスタマーサクセス業界では、タッチモデル(顧客との接触方法)、ヘルススコア(顧客の健全性指標)、チャーンレート(解約率)といった手法やKPIが重視されています。でもこれらって結局、サービス提供側の都合でしかないんです。顧客起点で考えると、本質的ではない」

いくら精緻な顧客管理システムを構築し、データを分析しても、肝心の顧客が期待した投資対効果(ROI)を得られなければ、最終的には解約されてしまう。この現実に向き合った結果、藤島氏は重要な結論に至った。

「BtoB向けサービスにおいて、顧客が最終的に求めるのは利益への貢献、つまりROIの実現です。企業の価値は利益で決まり、時価総額もPER(株価収益率)で算出される。この事実から目を逸らしてはいけない」

この気づきが、openpageの方向性を根本から変えることになった。同社が提供していたカスタマーサクセス向けのコミュニケーションツールを、「顧客の利益創出に直結する営業ツール」へと進化させる決断を下したのだ。

「カスタマーサクセスは顧客との関係維持が主目的ですが、営業は顧客の利益創出により直接的に関わります。顧客のROIに真正面から向き合うなら、営業領域でこそ価値を発揮できると考えました」

営業ツールへの転換:ROIを軸とした独自理論

こうしてopenpageは、カスタマーサクセス向けのコミュニケーションツールから、営業活動で顧客のROI創出を支援するセールステックへと大きく舵を切った。

この転換の背景には、営業業界でも同様の「ベンダーエゴ」が蔓延しているという気づきがあった。

「営業の世界でも、カスタマーサクセスと全く同じ問題が起きています。SFA(営業支援システム)やCRMで顧客データを蓄積・分析することが重視されていますが、これも結局はベンダー側の都合でしかない。本質的には意味が薄いんです」

藤島氏は力を込めて続ける。

「本当に重要なのは、顧客と直接コミュニケーションを取り、自分たちが営業提案する内容が『顧客にとっての課題解決』と『ROI貢献』に確実に資するものであることを証明し、顧客を動かすことです。これこそが営業の本質なんです」

従来の営業支援ツールは、営業活動の「記録」や「管理」に重点を置いているが、肝心の「顧客を動かす力」については間接的なアプローチに留まっている。しかし藤島氏の洞察は、さらに深いところにあった。

「常識的に考えれば、営業のツールは営業担当者向けに作れば十分だと思われがちです。しかし営業の先にいる顧客が、自社の課題解決のために発注を決断し、想定するROI以上の価値を回収するためには、顧客側にもツールを提供しなければならない。これが私たちの核心的な気づきでした」

つまり、真の営業取引における価値創出は、売り手から買い手への一方的なものではなく、双方向的なプロセスだということだ。

「Salesforceをはじめとする従来のセールステックは、すべて『売り手側の効率化』に着目していました。でも本当に成約率を上げ、顧客満足を実現するには、買い手である顧客側の意思決定プロセスもサポートしなければならない。この本質に、既存の大手ベンダーは気づけていないんです」

この発想の転換こそが、openpageの最大の差別化要因となっている。営業担当者が効率的に活動できるだけでなく、顧客側も自社のROI検証や意思決定を適切に行えるよう、双方向の価値創出を実現する仕組みを構築したのだ。

「営業の場面で顧客が発注を決める論理を徹底的に分析しました。結局のところ、それもROI判断に集約されます。営業担当者が提案する商品・サービスが、顧客にとってどれだけ大きく、確実にROIをもたらすかを適切に伝えられるかが勝負です」

藤島氏は、この「ROI訴求」のプロセスを体系化し、デジタル技術によって効率化・可視化するための独自理論を構築した。従来の営業活動では属人的だった提案力を、データに基づいて再現可能な仕組みとして整備したのだ。

「私たちが開発したロジックとノウハウにより、実際に顧客の成約率改善を実現できています。営業の成約率や成約単価を向上させる製品として、現在openpageが業界最高水準の性能を持っていると自負しています」

日本発クラウドベンダーとして世界の頂点へ

そして藤島氏の野望は、さらに大きなスケールに向いている。

「世界最大手のSalesforceでさえ実現できなかった『営業成約率の根本的改善』を、openpageは達成しました。今後はセールステック分野でSalesforceを超えて業界トップに躍り出ます。そうなれば必然的に、日本発のクラウドベンダーとして最大の企業価値を持つ会社になるでしょう」

この大胆な宣言は、決して根拠のない夢物語ではない。Salesforceの時価総額は約30兆円に上るが、同社の主力製品であるCRM(顧客関係管理)システムは、顧客情報の管理・蓄積には長けているものの、肝心の「成約率向上」という営業の最終目的に対しては間接的なアプローチに留まっている。

「Salesforceは営業活動を『管理』するツールです。しかし私たちのopenpageは営業の『成果』を直接向上させるツール。顧客のROI創出という本質に真正面から取り組んでいる点で、根本的に異なります」

この大胆な宣言の背景には、「本音をさらけ出す」ことで見えてきた市場の本質への深い確信がある。顧客のROI、つまり利益創出に真正面から向き合うツールを作ることで、既存の営業支援システムが持つ根本的な限界を超えられるという強固な信念だ。

インタビューの最後、藤島氏は再びアニメの話に戻った。

「富野監督が個人の葛藤や絶望感を『逆襲のシャア』にぶつけ、それに刺激を受けた庵野監督が自分の本音をエヴァンゲリオンで表現したように、私も自身の『本音』を事業に反映させています。カスタマーサクセス業界の建前や常識に疑問を持ち、ビジネスの本質と向き合った結果が、現在のopenpageなんです」

カスタマーサクセスからセールステックへの転換は、単なる事業戦略の変更ではなかった。業界の常識を疑い、本質と向き合った結果として生まれた、必然的な進化だったのである。そしてその先に見据えるのは、日本発の企業として世界のクラウド市場の頂点に立つという、壮大なビジョンだ。

 
 

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